ほら、まただ
またそうやって無意識の内に俺から目を離す
が甘く優しい目で捕らえる奴は俺の少し後ろに





そして俺はまた、知らん振り
胸の痛みなど悟られぬ様に話を続けるだけ



チクリ、チクリ



傍に居たいだけなのに痛みは増すばかりで
なのに大きく気持ちは膨らんで
有り得ぬ期待と絶対的な絶望の中を一人追いかけっこ





迷って立ち止まる
君を見つける
再び歩き出す、終わりが見えない君さがし
心は汚すぎる嫉妬と熱すぎる想いで比例する



チクリ、チクリ
これ程までに胸は痛むのに届かない理由は






「なあ」
「ん?」
「俺のこと見えとる?」
「見えてるよ」
「嘘ばっかやん」
「本当だって、目の間に居るんだし」






嘘じゃないのなら何故その目は俺を捕らえない?
の視線が向くのはいつも俺の少し後ろ
岳人だけを見つめるその視線に俺が写ることはない
の視線の先に俺は、いない





嘘ばかりが転がる
転がって転がって、後は、堕ちるだけ



I cyan't fancy doing it



を連れ去ってしまえば
手を固く握り締めて強く抱き寄せたのなら
は泣いてしまうのだろうか






「侑士」
「…ん?」
「岳人ね、あの子と上手くいったんだって」
「そうやったんや」
「本当は知っていたでしょ?」
「何でそうなんねん」
「ごめんね、ありがと」





そんな切なそうな顔してのありがとうなんて捨ててしまえ
涙で大きく揺れ動く瞳なんて向けないで、ねえ
笑ってみせてよ




幸せは誰にでも平等に降るはずなのに
今何故俺とは痛そうに顔を歪めているのだろう
こんなにも涙を気持ちを押し込める理由はきっと
チクリ、チクリ
それでも必死に相手を思いやる幼いなりの愛の印






、笑ってえな」
「ごめん無理」
「お願いやから」






俺の世界には確かにだけで
でもの世界にも岳人だけで
こんなにも、違う
視線は独占できそうにない
それだけで、こうも痛む




愛を一人でに叫ぶのはあまりに寂しすぎて
もう、君しか見えなくなる




いっそ胸の痛みなんて捨ててしまおうか
そうだ、追いかけっこなんてやめてしまおう
永久に続くであろう君さがし






光と影を交互に繰り返しながら擦れ違ってばかり
傷は増えてその度深く、深く
染みこむばかりの黒色
悲しい音に身を任せて、崩れる






零れる愛の哀しみ
の欠片を破片を少しでも
胸の痛みを捨てるときは消える







愛故の臆病は生まれつき
でも、気付いてください
その臆病に
でも、気付かないで下さい
その沈黙の愛に







「私間違った選択しちゃったのかな」
「何も間違ってへんよ」

誰も何も間違っちゃいない
ただそこには報われぬ想いがまた一つ

「好きになって良かったのかな」
「…それでええねん、きっと」







半分自分に言い聞かせた言葉に目を瞑る
まだ痛みは消えない
チクリ、チクリ
ずっと消えない





終わらない君さがしに夢中になる
Don't cry





絶対に振り向かないその悲しい背中に俺とはしがみ付く
悲しい、悲しい末路
見えない傷跡に血が滲む
流すことが出来ない涙の代わりに血を滲ませて
を思えば思うほど遠く離れ、愛を心で叫ぶほど悲しみに襲われる







「…、俺にせえや」







小さく小さく呟いた言葉は誰にも聞えやしない
愛は哀しみの音を立てて去りゆく
それでも必死に願う、笑っていてと
全てを包み込むあの笑顔をもう一度

振り向くことのない背中に










あとがき**

書いている途中に泣いてしまった作品
自分でも何で泣いたのかが分からなかった…
ずっと前から温めていた作品だからUPできて嬉しいっ
珍しく忍足さんには切ない思いをしてもらいました