やはりあの時死ぬ覚悟で引越しを止めるべきだったのだろうか
でもどちらにせよ無理だった気がする
新しい家から軽い足取りで会社に向かう父
副社長婦人として笑顔で父を見送る母
狙い通りの立海に通い毎日笑いが絶えない姉
想像通りの家に大満足の妹
それでも必死に戦っております!








beautiful days 〜立海マネの華麗な日常〜







学校に着くまでの間は自分の冷や汗と幸村様から放たれる黒いプレッシャ−との格闘だ
私以外に学校に着くまでにこんなに大量の冷や汗を流しひたすらプレッシャ−に耐えながら学校へ行く人が居るだろうか
おそらく、というより普通ならいない





余計なことは言わず聞かず、それを私は鉄則としている
もし幸村様の気に入らないことを言ったり聞いたりしてしまえば私は瞬殺されてしまう
私っていつ死んでもおかしくない状況なんだと改めて思った
唯一口を利くときは幸村様が私に何か問いかけたときくらいだ
ここでシカトという間違っても取ってはいけない選択をすると私はこの世から消える
もう生まれ変わりなんて許されない(再生不可能、生まれ変わり不能なほど粉々さ)
あろうことにも爽やかな笑顔で、バイバイとでも言うはずだ






「怖い、怖すぎる!」
「何が?」
「何でもないです」
「誰が?」
「誰でもないです」






何でそんなに追求してくるの
ちょっとちょっと、妙に顔近いって(まじで怖いって!)
何か要らないオ−ラ増してらっしゃるうううう!
貴方が怖いんです、なんて口が裂けても言えない
その後どうなるか何て想像しただけで軽く5日は震えと鳥肌が収まらない





幸村様は学校に着く間終始その殺人的な黒い笑顔を容赦なく向け続ける(アア、モウ私死ンジャウヨ)
黙って笑っているだけなのに幸村様がやるとこうも怖い
その原因はやっぱり顔に似合わない禍々しいオ−ラのせいだろう
こうして私が色々なことを考えている間にも笑顔のプレッシャ−は尚も続く
私は無言の怖さがこれ程怖いというものを幸村様と出会って初めて知った






人一人殺せそうな程のプレッシャ−を私に掛ける理由は何なのか
一生分の勇気を出して聞いてみよう
答え次第で私は即死かもしれない(まだまだ生きてえ!)




「あの」
「ん?」
「幸村様は私を殺す気ですか?」
「殺すなんてことしないよ?」




何その疑問系!
ますます怖いよ
はぐらかすところがこれまた超怪しいじゃないですか
じゃあ貴方様は一体何をする気なんでしょうか、何がお望みなんでしょうか
その目が怖いです、全く笑ってないし
やっぱり聞かなきゃ良かった(これじゃあ恐怖倍増だよ!)







ただ今朝の5時47分
ついでに言うと私が心の中で色々と格闘している内にいつの間にか学校に着いていました
こんな朝っぱらから学校へ行く理由
それはテニス部の朝練のため
言っておきますが私はテニス部でもなきゃマネ−ジャ−でもなんでもありません
自分から危険に飛び込んでいくようなそんなアホな人じゃないので





がしかし、幸村様の命令で何故か私も朝練に行くことになり今に至ります
とてつもなく嫌だったけど幸村様の命令を無視するなんてこと私にはできませんでした(どうせチキンですよ!)





テニス部でもないのに朝練に顔を出し続けて早くも3年目、いい加減解放されたい
私がずっと朝練に来るせいか毎年新入生は私のことをマネ−ジャ−だと勘違いする(赤也もそうだった)
マネ−ジャ−じゃないと言えば幸村様は高速スマッシュを打ってくる
当たるとかなり危険だからやめてほしい
何てたって本当にマネ−ジャ−ではないのだから






朝練に来たからといい得に何をするわけでもなく制服でみんなの練習風景を見守るだけ
はたしてこの行動に何か意味があるのだろうか?
近くのベンチに座り欠伸を一つすると仁王がゆっくりと近づいて来るではないか





も大変じゃのう」
「あの方には逆らえないから」
「確かには逆らえそうにない」
「幸村様絶対に確信犯だよ」
「まあ今日でその行動の意味も分かるじゃろ」
「…へ?」




意味不明(解読不可能)な言葉を残しこれから始まるであろう朝練のためコ−トに向かった仁王
こいつもこいつで不思議な奴だと思う(怖いのはもっぱら幸村様だけど)
そして午前6時、朝練が始まった
ふと幸村様と出会ったときのことを思い出す







最初会った時は軽くときめきましたよ、ええ
だって普通に美少年だし飴玉くれたし
第一印象はとにかく良かった
でも所詮最初だけでした
関わっていくうちに印象はガラリと変わりついには怖い奴としか思えなくなってきた
まあ優しさもないことなないと思う、思いたい(自分でもあやふや!)
仕舞いには同級生に対して幸村様と呼ぶ始末、自分でもかなり散々だと嘆いた





しかし私と観点が違う家族は全員幸村様のことを気に入った
父さんと母さんは「結婚まで持っていく」とか意味不明かつ本当に遠慮してほしいことまで言う
姉ちゃんは姉ちゃんで顔が良ければそれでいいのかお気に入り
妹は隣の家に住む優しいお兄ちゃんというかなり間違っている印象を未だ持ち続けている
私にはどうすれば妹の目にそういう風に幸村様が映るのかが謎だ
姉と妹の発言はともかく父さんと母さんの発言は今すぐに取り消したい
何て言うか凄くやめてほしい
もし本当にそうなってみろ
私は真田と結婚してやる!(うわ−ん)







別に幸村様が嫌いという訳ではない
しつこいかもしれないが単純に怖いだけなのだ
そういえば前に一度独り言で
「幸村様以上に怖いものなんてない、幸村様が怖くなくなるならゴキブリでも食べてやる」
などと言っていたらいつの間にか幸村様が隣に立っているではないか
あの時は一瞬心臓が本当に止まったと思う




ついには「じゃあ食べてみる?」と言われニッコリと微笑みを貰った
どうせゴキブリを私が食べたって幸村様が怖くなくなることなんてない!
つ−かゴキブリなんざ食べたくねえ!
あの時は2時間以上泣き続けた(そしてジャッカルと柳生に慰められた)







そんなことを一人あれこれ思い出しているとあの方に名前を呼ばれたではないか
−」
「何でしょうか」
「ちょっと来てくれない?」
いつものあの嫌〜な笑顔で手招きをする幸村様は立派な魔王に見える
あの手招きの向こう側にはお花畑が広がっているのかなあ
針地獄だけは勘弁してもらいたい
いよいよ処刑実行か(まだ遺書柳に渡してないのに)






そんな覚悟を決め幸村様のところに向かった私はとんでもないことを聞かされることになる
やっぱり今日は人生で一番の厄日だ
ああ、死ぬ前にもう一度ポテ●食べたかったのに
神様はやはり私の見方をしてはくれなかった
神をも操る男、幸村様恐るべし!
私の驚愕、そしてうっすらと涙を浮かべる顔を見て幸村様は綺麗に微笑んだ











あとがき**

さあヒロインに何があったのか!
次回で分かることでしょう



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