幸村様の綺麗なお口から華麗に紡ぎ出される言葉達
ああ、何とも信じ難いお言葉ばかり!
意識が朦朧とし遠くなるのをしっかりと感じながら私はそれでも勇敢に最後の言葉まで耳を傾けた
「には夏休みからマネ−ジャ−になってもらうから」
あまりに爽やかな美少年スマイルで決めた幸村様は宜しくね、と付け加えた
グラリと視界が大きく揺れ私はヘナヘナとその場に倒れこむ
上を見上げればご機嫌な幸村様の笑顔
眩暈が私を襲い意識が完全に途切れた
beautiful days 〜立海マネの華麗な日々〜
仁王に首の根っこから掴まれ着いた教室
放り投げられた私は暫くその場に座り込んだ(投げるってどうよ、投げるって!)
朝の出来事が私の頭でことごとくフリ−ズする
教室のドア付近で不自然にも座り込む私にクラスメイトは気付きながらもあえなくスル−
一応クラスメイトなんだからさ、声くらい掛けようよ
ますます落ち込んできたその時だった
「朝から暗いね−」
私の隣に座り込み顔を覗き込む
常に行動を共にしている美人で自慢の友達
こいつがクラスメイトで本当に良かった
「あ、ああああああ!」
「クラスの皆にスル−されて私に声掛けられたからって泣くな、擦り寄るな、若干うざい」
とまあ結構ハ−ドな子なのですが実は優しい、はず
「人が明らかに落ち込んでるのにみんな完全無視だしさ」
「そりゃあそうだろうね、教室に来たと同時にドア付近で座り込みすすり泣く気持ち悪い女誰だって相手にしたくないっしょ」
「超ハ−ドおおおおおおおお!」
「うっせえよ」
かなり強めに頭弾かれました
本当に痛い
取り合えず席に着いた私はさっきより少しだけ落ち着いた
「また幸村くんに無茶なこと言われたとか?」
さっきまで散々人をボロクソ言っておきながら結局は話を聞いてくれるは優しい
でも皆に「優しいよね」と言うと「お前に優しくないだろ」という何とも可哀想な答えがいつも返ってくる(非常に謎だ)
まあ皆が何と言おうが私とはどちらにせよ仲が良いのでこの際どうでもいい
「今度ばかりは無茶とかそういうレベルじゃない!もうあの人神様操ってる!」
「意味分かんね−よ」
「いてっ!」
頭弾かれた次は額に強烈なデコピン
細い腕でこんなに威力があるだなんて世の中物騒だ
「今の発言は幸村に報告じゃな」
「やめてよ、MAJIDE!」
「…報告じゃけえ」
「NOOOOOOO!」
実は仁王くんも一緒のクラスだったりします
ペテンばかり掛けてくるので正直イラッときたりします(嘘です)
「MAJIDEとかいちいち英語に変換するな!」
「ごめん調子乗った!」
そんなこんなで私の日常は始まったりする
「話が大きくずれた」
「お前のせいでな」
のつっこみは強烈極まりない
見事にボケを一刀両断するそのつっこみは見事だと心底思う
「んで何?あんなに気持ち悪いほど落ち込んでた訳は?」
私の真正面に座るの隣に何気なく立つ仁王
きっと幸村様からの命令に違いない
下手すりゃ速攻幸村様が直々に私を抹消しにやってくるはず
危ないことは言えない!
「え−、最初から説明しますとね…」
迂闊なことを口から滑らせないように私は話をし始めた
意識が完全に途切れたのは5秒程
もう少し現実から目を背けたかったのに幸村様の「今立たなきゃ真田にお姫様抱っこしてもらうから」の一言で飛び起きた
今では嫌すぎる程完璧に目覚めましたとも
頭の中では幸村様の言葉が永遠とフリ−ズして仕方が無い
マネ−ジャ−、一番やりたくなくて興味がなかった仕事
それが明日から始まる夏休みから強制的に強いられたのだ
もうそろそろ泣いてもいいだろうか(とかいいつつ涙とか出ないけどさ)
私は幸村様と学校に向かっている途中感じ取っていた
絶対予想だにしない危険な何かがあると私の危険レ−ダ−のサイレンが頭の中で音量MAXで流れていたのだから
要らない絶対的な自信は1時間後しっかりと現実になって返ってきた
マネ−ジャ−だなんて糞食らえ!
だがしかし幸村様だけには小心者の私は断ることすらできない、と言うより許されない
結局は明日から部活に強制連行されマネ−ジャ−業をこなす事になるのだろう
想像しただけでも身震いが止まらないこと止まらないこと
今まで以上の恐怖で彩られた生活が新たに始まるのだ
「し、死ぬ…」
「まあ気持ちは分かるがそう気落とすなって」
「ジャッカル…気落とすなって言うけど無理だって」
「さんそうおっしゃらずに」
「だって考えて柳生、幸村様だよ!神をも操る男だよ!」
「ふふ、幾ら僕だってそんなこと出来ないよ」
「ぎゃあああああああ!」
何でこう幸村様は私が禁断の言葉を口にした瞬間隣に居るのだろう
毎回恐怖ながら疑問だ
私の断末魔の叫びを楽しそうに見物しながら幸村様は部室へと消えていった
「…て、あれ?朝練終わったの?」
幸村様の額に微かに浮かぶ汗で気が付く
部室に行ったのは着替えるためだろう
「が一人でマヌケ顔している間にとっくに終わったぜよ」
後ろから物音さえ立てず現れた仁王に一瞬肩を上げる
独り言を言ったつもりが仁王にはしっかりと聞かれていたらしい
「うお、びびった!」
そう声を上げた私に仁王は喉を低く鳴らし笑う
柳曰く、この仁王の笑い方に多くの女子は腰砕けになるらしい
「仁王今日着替えるの早いね」
「やることあるけえ、そのためじゃ」
多分今すぐ私はこの場から立ち去るべきだろう
私の危険レ−ダ−は気まぐれに時々仁王に反応することがある
そしてそれが今だ
楽しそうに口端をニヤリと吊り上げたその顔を見れば誰だって自分に降り掛かろうとしている危険くらい察知できる
しかし逃げようにも逃げることができない
テニスをしながらも綺麗な手が私の手首をがっちりと掴み完全に逃げることを制御するこの男
仁王さん、あなたクラスメイトながら結構怖い存在だよ!
「離して頂けると有り難いというか…」
「無理じゃ、幸村からの命令じゃけえ」
「なら益々離してほしい!」
「無理じゃ言うとる」
逃げることを予測してこの仁王を使うとはやはり幸村様は恐ろしい
こうして私は完全に逃げ道を失った
仮に今上手く逃げられたとしても数秒で捕まってしまうはず
しかも今度は仁王だけじゃなく幸村様の命令でレギュラ−陣みんなで私を追い掛け回すだろう(あのジャッカルまでも!)
過去に一度経験済みだ
あの時は自分の行為が気色悪いと分かりつつも不細工に泣き叫びながら校内を走り回ることを止めるなんてできなかった
元々老け顔の真田が凄い必死な形相で私を追いかけて来たときは心臓が止まるほどの怖さ
滅多に開眼しない柳の目が思いっきり開いたと思ったら幸村様に負けず劣らずのビ−ムを出すわで瀕死体験をした
あんな体験は二度とごめんなので私は大人しく仁王に捕まっておくことにした
これが私が少しでも長く生き延びる最良の手だと信じて
「幸村様何で私捕まえとけって?」
「はきっと逃げてマネ−ジャ−の話をはぐらかすはずだから仁王捕まえといてって言ったの」
「………ん?」
今明らかに仁王の話し方じゃなかったような気が…
一気に出た冷や汗が私を襲う
仁王であって欲しいという思いをかなりかなり詰め込んで仁王を見上げた
見上げた先に居た仁王はニヤリと笑い無情にも言い放ったのだ
「俺じゃなかとよ」
「俺が言ったんだよ」
恐る恐るロボットの様に首を少しずつ後ろに回転させる
「ゆゆゆゆゆゆ、幸村様っ…!」
「ご苦労様だったね、仁王」
「このくらい何でもなか」
いやいやいや!
私にとっては凄く長ったらしく恐怖だらけだったんだけどね!
この2人のペアは最強に恐ろしい
何考えてるかまるでさっぱりだしやることなすこと全て怖いったらありゃしない(ここに柳が加わると三大恐怖!)
「さて」
仁王とにこやかにお話をしてらっしゃった幸村さまは私の方に首を向ける
相変わらず私の手首は仁王に逃げられたまま
「みんな揃ったし行こうか、仁王はのこと捕まえといて」
幸村様の言葉に周りを見渡す
確かにレギュラ−陣お揃いなすった
「手首じゃ逃げちゃうかもだからこの際首とっ捕まえといて」
「別に逃げないからやめてえええええ!」
私の必死の叫び声も当たり前の如く届かず首を捕まえられ半分引きずられながら学校へ向かう始末
「ジャッカル助けて!」
「これだけは無理だ、ごめんな」
「丸井お願い、救出して!」
「こんなん無理だろい」
「赤也は助けてくれるよね!」
「仁王先輩と部長怒らしたら俺死ぬんで無理っす」
「ジェントルマン柳生!」
「すみません、さん」
「お願い柳いいい!」
「いいデ−タが取れるぞ」
「最後の頼みだ、真田!」
「……すまん」
「お前等みんなあああああああああああ!」
校舎全体に私の怒りの声が吹き飛ぶ
仁王はそんなことお構いなしなのかどうでもいいのか気にせず歩き続ける
手は変わらず私の首をきっちり挟んで
「煩いよ、縛り上げられたいの?」
「とんでもございません!」
縛り上げるなんてとんでもないこと言い出すな、この人
こうして私は仁王に引きずられ、みんなに見殺しにされ、学校の生徒には奇人変人の目で見られ散々だった
「そういえばマネ−ジャ−すると推薦で高校行けるよ?」
「ならやる!……え、あ、今の嘘」
「今言ったことを取り消すならの存在も取り消すから」
恐怖やら幸村様に上手く乗せられたやらで私のマネ−ジャ−は決定した
自分のアホさにいい加減泣けてくる
「…と、こういう感じよ」
「超おもしれ−」
「じゃろ?」
「ちょっとちょっと!」
人が軽く死にそうになったのに面白いってどうよ(机バンバン叩いて大爆笑だよ)
とにかく教室に来るまで酷い扱いを受けまくっていた私
「まとめればマネ−ジャ−することなったんだ」
「もう毎日が恐怖で埋め尽くされていく…」
「既に毎日が恐怖色じゃん!」
「んな明るく言うなよ!」
今日はHRがない
持ち物を教室に置いて体育館集合
明日から夏休みのため終業式が行われる
みんながぞろぞろと体育館に向かって移動したため私達も椅子から立ち上がりのろのろと体育館へ向かう
「マネ−ジャ−か、まあ頑張れ」
「何でやるなんて言ったんだろう…」
「そういえば明後日から氷帝との合同合宿があるのう」
「は?」
気になることを(多分)わざと言い残し仁王は体育館へと向かわずふらりと消えた
「NOOOOOOOOO−!」
「うっせえ」
聞かされていなかった事実に私はここが学校だということを忘れ思い切り叫んだ
周りの人からドン引きされ冷たい視線を浴びせられたがそれはこの際気にしないことにしよう
あとがき**
次回は氷帝との合同合宿!
何がどうなるやら…
宜しければ投票を!